印象 日の出

マルモッタン・モネ美術館所蔵
【モネ展】 「印象、日の出」から「睡蓮」まで
2015年9月19日から12月13日まで

日本人は印象派の絵が好きだ、とは良く言われることですが。
私は印象派は嫌いじゃないけど特に好きでもない。
どちらかというと、ルネサンスとかバロックのドラマティックな絵の方が好きかも。

今回のモネ展は「印象派」の言葉の由来となった「印象、日の出」が来日するということで、東京都美術館へ行って来ました。
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展覧会の構成は、まだモネが若かったころの作品から晩年の作品まで、年代順になっています。
若い頃にはカリカチュアと呼ばれる風刺画、似顔絵を描いてお金を貯めていたそうです。
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鼻が大きな人、唇が厚い人、目つきの悪い人
あ〜この人きっと本当にこんな顔してたんだろうなぁって思える、ものすごくデフォルメした絵になってます。

いろいろと素晴らしい絵はあったのですが、やはり「印象、日の出」について書きましょう。
エスカレーターを上がったその場所、薄暗い部屋の中にあざやかな光を放って「印象、日の出」はありました。
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フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のときのように、絵の前にはロープが張られて前の列と後ろの列に分けられています。
前の列は立ち止まってはいけないけど間近で見られる。後ろの方は立ち止まって見ていいけど、絵との距離がある。
パンダ方式です。

とりあえず、ロープの後ろの最前列を陣取りました。
すごい。
筆のあとが分かる粗い絵なのに、本当に朝の光が射しているように輝いて見えます。
展示室の天井を見上げてみました。強烈な照明でも当てているのかと。
確かに照明はあるけど、それほど強烈な光とは思えない。それなのに、この輝き方は〜!!
見ていて体がゾワゾワしました。
絵を見ていてこんなゾワゾワした感覚は初めてです。

しばらくその場で絵を見ていましたが、そのあと前の列に並びました。幸い平日だったため、それほどの混雑ではなく、すぐに絵の前にたどり着きました。
近くで見ると、絵の具が盛り上がっているのがわかります。
「はい、立ち止まらないで前のかたに続いて進んでくださーい」
横に立っている警備員さんの声に気づくと、私の前にいた人はもうとっくにいなくなってました。
慌てて絵の前から立ち去る私。
歩きながらだなんて、絵画鑑賞の仕方としてどうなのよ〜〜
( ̄Д ̄)ノちっとも良く見えないな〜
そして、部屋の後ろの方から眺めたり、横の方から眺めたり、また後ろの列の最前列から眺めたりして。
再度前の列に並ぶ私。
そしてまたまた警備員さんから注意を受け、またまた後ろの列から眺める。
かなりアヤシイ私の動きσ(^_^;)
それにしても、この輝きと透明感はなんだろう。
自分がこの絵の中のルアーブルの港にいるように思えてくる。
クロード・モネ恐るべし!

少し進んでほかの絵を見て、また「印象、日の出」の部屋に戻ったり。立ち去りがたい気分。
しばらくの間、行きつ戻りつしていましたが、やっと上の階に移動しました。

モネの晩年の絵が並んでいます。
今までの明るい光を感じる絵から一変して、抽象画とも思えるような絵です。
緑、赤、オレンジ、強烈な色が混ざり合い、一見すると何が描いてあるのか分からない絵。
でも、じっと見ているとぼんやりと見えてきます。
モネの愛したジヴェルニーの庭が。

睡蓮の池
バラのアーチ
日本の太鼓橋

晩年のモネは白内障を患い、物の形が良く見えなくなっていたそうです。
愛する妻アリス、長男ジャンの死。
アリスは二番目の妻です。最初の妻カミーユは若いうちに病気で失っています。
孤独と向き合って、絵を描き続けるモネ。
モネは絵を描くように、自分で庭を作っていたそうです。キャンバスに絵の具を置くように、花を配置し、池を作り睡蓮を浮かべ、木を植えて。
そうして何年もかかって作り上げた庭を、彼は描き続けたのです。描き続けるしか彼にはできなかったんだろうな。

「バラの小道、ジヴェルニー」
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白内障の影響で、今までとは景色の見え方が違っていたのでしょう。でも解説を読むと、白内障の手術後は近くの物なら見えていたそうで、絵の表現の変化は白内障のせいだけではないそうです。

絵を描くしかなかったモネ。
昨年開催された「オルセー美術館展」で見た「死の床のカミーユ」の絵を思い出しました。
妻が息を引き取ったとき、絵筆を取ってその姿を描いていたモネ。
画家の業とでもいうのでしょうか。
モネにとって描くことが全てだったのかもしれません。

最晩年のモネの作品たちを見ながら、胸にこみ上げるものがありました。

「印象、日の出」は、10月18日で展示が終わってしまいました。
展覧会後半は「ヨーロッパ橋、サン・ラザール駅」が展示されるそうです。
また見に行こうかな〜
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《オマケ》
実は・・・
モネ展に行った翌週、またモネ展に行ってしまいましたσ(^_^;)
もう一度「印象、日の出」が見たくて。
冷静になって観察してみたら、ほかの絵とは明らかに照明が違ってましたね。
あの照明のせいであんなに際立って見えたのか?
特殊な照明を当てない状態で見てみたいものですね。でも、素晴らしい作品であることには変わりありませんけど。
モネのおかげで、印象派の絵が前よりもかなり好きになりました。