あやしい絵展

「あやしい絵展」

2021年3月23日〜2021年5月16日

東京国立近代美術館

 

 

幕末から昭和初期のあやしい作品を集めた美術展。あやしいって…どんなの?

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この猫がイヤホンガイドで作品を案内してくれます。ニャー

館内は撮影NGな作品以外は撮影OKでした。

 

稲垣仲静「猫」1919年 絹本彩色

星野画廊所蔵

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うん。たしかにあやしいね。

猫の体の形、そして何よりこの顔。ずっと見ていると般若のお面にも思えてきます。

あとから気が付いたんだけど、この絵の下部の中央付近に四角で囲まれた「0」が写り込んでました。

なんだろ?不思議…

 

 

 

イヤホンガイド。このあやしい声はどこかで聞いたことがあるような…そうそう「鬼滅の刃 無限列車編」で夢を操っていた鬼の声です。

平川大輔さん、あやしい雰囲気がこの美術展にピッタリ。

 

 

 

 

鳳(与謝野)晶子「みだれ髪」

(東京新誌社、明治34年藤島武二装幀 印刷・紙

1901年 明星大学所蔵

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ハートの中に女性の横顔、デザイン化された髪の毛、飾り文字「みだれ髪」

アール・ヌーボーの影響がうかがえます。

 

 

ロセッティ「マドンナ・ピエトラ」パステル・紙

1874年 郡山市立美術館所蔵

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妖艶な女性を多く描いたラファエル前派の画家ロセッティ。「マドンナ・ピエトラ」はダンテの詩に出てくる女性で、自分に恋する男を捕らえて石に閉じ込めてしまうのだそう。ロセッティが繰り返し描いた「宿命の女」。男を破滅に追いやるファム・ファタル

美しく波打つ豊かな髪の毛と、ぷっくりとした唇がロセッティの特徴です。

 

 

 

アルフォンス・ミュシャ「ジスモンダ」リトグラフ・紙

1895年 三浦コレクション、川崎市市民ミュージアム所蔵

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こんなところでミュシャに会えるとは(^o^)

女優サラ・ベルナールの舞台「ジスモンダ」のポスターのこの作品で、ミュシャは一躍パリの売れっ子画家になりました。

 

でも、ミュシャがあやしい絵?

この第二章のテーマは

花開く個性とうずまく欲望のあらわれ

第二章の一

愛そして苦悩 心のうちをうたう

西洋の影響を受けて、人々の価値観も大きく変わった時代。夫の与謝野鉄幹とは最初は不倫の関係だった与謝野晶子。それまでにはなかった女性の恋愛感情を詠んだ「みだれ髪」は、当時賛否両論を巻き起こしました。

「みだれ髪」なるほど、たしかにあやしいわ。

そして、それに影響を与えたロセッティとミュシャ、というわけですね。

 

 

 

第二の三

異界との境(はざま)で

 

 

谷崎潤一郎「人魚の嘆き・魔術師」(春陽堂大正8年)印刷・紙

水島爾保布(みずしまにおう)「人魚の嘆き」口絵、扉絵、挿絵

1919年 弥生美術館所蔵

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谷崎潤一郎の小説「人魚の嘆き」の挿絵。

ある貴公子のところに商人が人魚を持ってきた。大量の金銀財物と引き換えに手に入れた絶世の美貌の人魚。貴公子は毎日水槽の中の人魚に恋焦がれるが、人魚の願いにより、やがて人魚を海に帰す。

あやしい…ひじょーに、あやしい。

 

 

月岡芳年「和漢百物語 清姫」大判錦絵

1865年 町田市立国際版画美術館所蔵

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安珍清姫の物語。

旅の途中で一夜の宿を借りた修行僧、安珍。その家の娘、清姫は美しい安珍に心を奪われてしまう。旅立つ安珍は、帰りに必ずまた戻ってくると清姫に約束するが、戻って来ない。怒った清姫は蛇に姿を変えて安珍を追いかける。道成寺の鐘の中に逃げ込んだ安珍。蛇になった清姫は鐘に巻きついて、とうとう彼を殺してしまう。

 

恐ろしき

女の情念((((;゚Д゚)))))))

 

 

橘小夢(たちばなさゆめ)「刺青」凸版、手彩色・紙

1923年または1934年 個人蔵

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谷崎潤一郎の小説「刺青(しせい)」を題材にした作品。

刺青師・清吉は、かねてより美しい女性に刺青をほることを夢見ていた。ある日、一人の不思議な美しさを持つ少女に出会う。少女を薬で眠らせ、美しい背中一面に女郎蜘蛛をほった。眠りから覚めた少女は、以前の純真な少女ではなく、人が変わったような魔性の魅力を持った妖艶な女に変わっていた…

刺青をほった男、人が変わったような女

本当に恐ろしいのはどっち?

 

こ、この絵は

めっちゃ気持ち悪い〜Σ(゚д゚lll)

さっきの「人魚の嘆き」も谷崎潤一郎だったけど、これも谷崎潤一郎

谷崎潤一郎は「春琴抄」しか読んだことないけど、今度これらのあやしい小説も読んでみようっと。

 

 

このほかにも、いろいろとあやしい絵が展示してありました。

 

西洋画でも日本画でも

あやしく、男を破滅させる女…共通して「女」なんですね。男性によって社会が作られてきたからね。男性側からの目線で描かれてるあやしい絵。美しい「女」は絵になるし。

でも、女を破滅させる宿命の男、イケメンの絵があっても良さそうなのにね〜

 

甲斐庄楠音(かいのしょうただおと)「幻覚(踊る女)」絹本彩色

1920年 京都国立近代美術館所蔵

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最初に載せた「あやしい絵」の看板に使われている「横櫛」も甲斐庄楠音の作品。「横櫛」も、この「幻覚」も、独特の毒々しさを醸し出しています。

岸田劉生に「デロリとした絵」と言われたという甲斐庄楠音の絵は、一度見たら忘れられないあやしさでした。

「デロリ」とは岸田劉生の造語で、生々しくグロテスクで奇怪な表現のこと。岸田劉生の絵もデロリですね。

 

あやしい絵の世界。

面白かったです( ̄▽ ̄)